11. クンバハカ法
(伊達静 所蔵)
クンバハカ法
天風先生講話後半部(抜粋) 昭和35年
ヒマラヤの山麓、現代の文化からほど遠いヨーガの里に、クンバハカ密法がありました。
それを習得することによって、己の心身が自分でも信じられないほど見違えるように変わってしまった。たいへん効果のあるもんなんです。
しかし、たいへんに難しいものであるから、長年ヨーガをやった人か私のように軍事探偵のような特殊な訓練を受けた者でないとなかなかか習得できない。そこで昭和7年頃から今あなた方にこれから教えるような本物のヨーガのクンバハカ方法を、現代文化の日本民族に実行しやすいように組み変えてみました。
それでも非常に効果がありますよ。本物はもちろん難行苦行に耐える体を造るためですが、これから教えるのは「神経反射の調節」さえすればいんだから、目的が自ずから違いますから、難しい理論は本に書いてあるから本を見て、ここでは方法だけをおさわりなさい。
それはね感情や感覚に衝撃刺激が来たなら、いきなり驚いたり怒ったりすることを、止めようとしたってだめだから、それはそれとして置いといて、先ずとりあえず一番初めにやらなくてはならないものは、肛門をキューと締めちゃうこと。気がつくたんびに、きっとあなたがたはお尻の穴が開いているってことを経験しますよ。まぁ見えない所だからいいと思っているだろうけど、お尻の穴というのは、ほんとうは開いていてはいけないもんなんです。
「いや締まっています」と言っても、それは自然の括約筋で締まっているだけで、特別に自分の意識的な緊張はしていないじゃないかな。そうして肛門を締めると同時に、臍下丹田いわゆるヘソを中心としたお腹にグッと力を入れる。このグッと力を入れるのは、全生命の肉体の重心を安定せしめるためなんだ。それと同時に肩の力をヒョイと緩めちゃう。肩が上がっていると横隔膜が上がり神経反射を完全に消滅できない。横隔膜をグッと安定せしめて全生命の重心を臍下丹田におしつけ肛門をしめる。
最初の間は、なにはともあれ何時でも肛門がしまっている自分になり得るように、折りあるごとに、時あるごとに、肛門を締める努力をしなさい。歩く時でも、座って立ち上がる時でも、座る時でも、肛門を締めといて、いや、もっと厳密なことを言えば、「えへん」と咳払いする時も締め、「おぃ」と言う時も締めて、「はい」と返事するときも締めて、だんだんそれを練習して行くうちにひょいと気がつくのは、本当に尻の穴というものは今まで知らなかったけれどもいつも開いているな〜と気がつく。
これはね〜尻の穴を開けといても、急激に突発的な変化がなにも起こらないから、その必要を感じなかったかも知れないけど、これがインドのような猛獣や毒蛇の多い所に行きますと、尻の穴が開いているとすぐにやられてしまう。だから犬があなたがたに吠えついたりしたら、尻の穴を締めてジ〜と犬の顔をみていたら吠えるのをやめてしまうから。人間の目には映らないけど、ああいう動物というものは人間のもたない感応というものが非常に鋭敏なんです。だから動物の目には肛門が締まっていると体から出すオーラが違うんです。オーラとはフランス語で見えない光でして、その見えない光が動物には見える。視覚神経に映るのであります。だから肛門を締めてジーと見つめている者には吠えたりしない。私が虎のオリの中に紋付袴のままで入って大きな虎と一緒に写真を撮ったり、 鶏が私の前でパッとすれば動けなくなるでしょう。これはみな自然に私の体からオーラが出ているからなんですよ。ですからどんな場合だって私の肛門は生理要求のある以外は開いてなどいません。
人間は万物の霊長だもん、誰でもそのように成れますよ。私だけでなくあなたがたも成れるのです。だからあなたがたもそのように、体の方を何時でもなれるように習慣ずけ、何時も肛門の締まった人間になるようにしないといけません。肛門さえ締めておけば、あとの腹に力を入れ、肩を落とすなんてわけないことです。それを普段なんにもしないでもって、いざお尻だ、腹だ、肩だと言っても間に合いません。
実行しないで聞き放しでは何時までたっても上達しません。実行せずに理屈だけ聞いても上手くなれません。おまけにこれはいちいち隣のおばさんや、おじさんに頼む必要もないんだ。己の現在もちうる体でできるんだもん。一番練習しやすいですよ。これをやっているとただ単に神経反射の調節法ができるばかりでなく、神経の生活機能を旺盛にし内蔵の全ての調子もよくなり息切れなんてものはなくなってくる。
とにかく、わずかな方法でもってそれが自分のものになってしまうと、自分でもこれが自分の命かいなと思うほど幸福を感じますから。やさしい方法だろ、わけない方法だろ、理屈は今は厳密に知らなくていいから、息にかまいなく尻の穴をしめて、肩を落として、腹に力を入れるということをなんべんでもやっていると、同じびっくりするにも、腹が立つにしても、たちまちそれはもう火に水をかけたのと同じようにだんだん収まってくる。
呼吸にあまり入念に注意しなくてもいいから、ただしこういう時だけには呼吸に注意してください。尻をしめて、肩を落として、腹に力をいれながら深呼吸するの。これを一日になん百回でもやりなさい。私のようになっちまうと朝から晩まで深呼吸しどうしであります。深呼吸しない時はありません。こうして話しをしている時はもちろん、普通に休んでいる時でも、少なくても私の呼吸はあなたがたよりも三倍くらいの長さでやっています。それはまぁ何十年もたっての結果ですが、それはあなたがたの場合は、最初の間は気がついたら深呼吸するんだよ。死ぬまで必ず呼吸をしてなくてはならないのだから、寝た間もけして多過ぎて困るという事はないのだから。
しかし、深呼吸は尻を締めて、肩を落として、腹に力を入れてやらないと肺気腫という肺がゴムの風船をふくらまし過ぎるとしわがよってしまうでしょ、あれと同じような状態にんるから、必ず尻を締めて、肩を落として、腹に力を入れて、べつに腹に吸い込もうとか、どこに息を吸い込もうとかいう観念を使わなくていいから、尻を締めて、肩を落として、腹に力を入れながら、できるだけゆっくり、深く、長く、気のついたたんびに一息でも二息でもいいから、ただし一日に一息や二息ではないよ、一日に一息や二息ではなんの効果もありはしません。もう間がなしきなくやってごらん。それは何てことはないね、そうすれば使うそばからお金が入ってくるのと同じような状態だ。活力と復活と補充ができるようになるから。
これだけ聴いただけでも、どれだけ大きなもうけもんかわからないだろう。しかし、聴き放しは駄目だよ、やらなければ。
クンバハカ一番
肛門を締めておいて、肩だけ落として、腹の方は考えないで、息を出すだけ出しちまう。
出しちゃって、出し切ってと思ったら時に、あらためて肛門を締めて、肩を落としておいて、息を吸い込む。
いっぱい吸い込んだ時に、おなかにぐっと力を入れた、そしてまたハーッと出す。
一回に二度か三度でよろしい。
息はしてなければなrないんだから、日に何千回でも、死ぬまで面倒くさがらずに、
意識的にそれをやってみる。
僕なんかほとんどね、朝から晩まで、いや寝ている時にもその呼吸ですぜ。
(「成功の実現」第五章 P177−P185)
「何としても怒り悲しみ怖れを制御する事ができない時は、そういう時こそクンバハカ密法の修練に最も都合のよい時であるから一段と真剣に実行するがよい」
(天風箴言カレンダー7日)
補記:
▼天風式クンバハカ法を習慣化するコツ
「天風式クンバハカ法」の習慣をつけるのに一番いい一石二鳥の方法がある。
日に何千回でもいいから、深呼吸をすることを稽古なさい。
深呼吸は出すだけ。深呼吸なんだから、「呼」のほうから先におし。
そのときに、肛門は締めておいて、肩だけ落として、腹のほうは考えないで、息を出すだけ出しちゃう。
出しちゃって、出し切ったなと思ったときに、改めてまた肛門を締めて、肩を落としておいて、息を吸い込む。
いっぱい吸い込んだときにおなかにぐっと力を入れて、そしてまたハーッと出す。
一度に二回か三回でよろしい。
日に何千回でも、意識的にそれをやってみる。
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