10. 宇宙への回帰
(NY ロックフェラーセンター、アトラス像)
宇宙への回帰
本題のテーマから少し話しが飛びますが、章の最後に宇宙の生命エネルギーと人間の生命エネルギーを、5億年の人類史の流れの中でみて行くことにします。
人類はいま地球的心性意識から宇宙的霊性意識へと生命の飛躍の時を迎えています。私たちはいま宇宙と地球を舞台にした、人類史上初めての「地球文明」の誕生を目撃しています。
「地球文明」の最高の目的は、宇宙エネルギーの実在を認識し、宇宙における人間の霊性心の発現となります。これが地球を宇宙の中でとらえたアポロ飛行士から人類に向けたメッセージではなかったかと考えます。
人類は原始の時代から本能的に上方への意志をもち、それが350年万前に人間を大地に2本足で立たせる原動力となりました。2本足で大草原へ歩きでて、遥か上空を見上げて指さし、天上の神々と宇宙を発見しました。
さらに神秘なる宇宙への探求は、急速に近代の理性と科学を発展させ、天上への意志はついに人間の根源的生命の出生をなした宇宙へ回帰しようとしています。黙示録的に宇宙の根源へ回帰することによって生命の飛躍をめざしています。
それはちょうどサケが稚魚が育った川から、海を下り4年間も遠くアラスカあたりまで回遊し、産卵の新生のため再び母なる川上へ一筋にさかのぼって回帰するかの如くにです。
人類はすでに現代の文明を超えて、地球文明を創造すべく全世界的な交通手段、通信、情報ネットワークを整備しています。世界に向かって発信するインターネットやユーチューブによる映像が、全世界に拡大し次第に、国境、国籍、民族を越えた地球意識の連帯感を芽生えさしています。世界の出来事がほぼ同時に地球を駆け巡り国境を越えて世界各地で共有されています。アポロ宇宙船はすでに地球の表層に国境など存在していない一つの球体としてとらえています。
そうした地球文明の萌芽期にありながら、新文明を建設すべき創造的精神が、宇宙エネルギーから乖離して糸の切れた凧ようになっています。現代文明は知識の増進と啓発に重点をおき、精神の方面を軽視し没却してきました。物質文化ばかりが発達し精神文化が立ち遅れてしまい、地球文明を支えるべき精神方面が、栄養不足になって萎えてしまい驚くほど貧困をきたし、消極的なニヒリズムが地球の大地を被っています。
現代文明を支えてきた人間の理性は確かに豊かな科学技術の成果をもたらしました。しかし一方で科学技術を支える精神方面の開発をおざなりにしてきたのも事実です。近代科学は人類を一瞬にして滅亡させる原子爆弾まで造りながら、理性が原子力による滅亡の恐怖におののいている始末です。
物質文化のみ進歩し精神文化を呆れるほどに置き去りにしてきてしまい不均衡を呈しています。情報ネットワークはクモの巣状に地球をカバーし情報を一瞬のうちに世界化して共有していますが、それを受け取る側の人間の理性が情報量の洪水に溺れてしまいますます混迷を深めて揺らいでいる状態になっています。
近代理性は中世の神々を抹殺し、神の代理人として「理性の王国」を打ち建て豊かな物質文明を築いてきました。しかし21世紀のここに来ていろいろな方面で「理性の王国」が揺らぎ始めて行き詰まり理性だけは活きて行けないことを露呈しています。
原子力まで創造した科学が、それを使用する人間の霊性に関して全く無知であるという悲しむべき事実によって、さまざまな悲劇を生みだしています。科学技術は人類を月面まで送りながらも宇宙的宗教感情の探求には全くふれることなく、宇宙飛行士の魂は引き裂かれたままになっています。
生きた宇宙、生きた地球を、心にもたなくなった現代人は、宇宙大生命の絆から乖離して荒涼とした不毛の大地で孤独になっています。宇宙生命の波動エネルギーは、地球をめぐる生きるものすべてと創造的な輪で結ばれ鼓動を共にしているのに人類だけが独りその魂を失い、宇宙と地球の輪舞に入ることができず未だ理性にしがみついています。
かって日本の万葉人の精神は、月へ行かずとも宇宙の根源的生命エネルギーと人間生命のつながりを純粋に感覚し、大宇宙の生成化育がそのまま小生命と合一しているという意識をもっていました。太陽の光を自分の魂の光として、大空の自由を心に抱き、澄んだ湖の叡智を静かに讃美し、高い山の意志をもち、海洋の生命力にあふれ、月や雲や風とともに愛し、恋し、暁の幻想に胸をとどろかせ、泉のような想像力にあふれていました。山々と語り森の声を聴き、湖と言葉を交わし、鳥や虫のさえずりに耳を傾け、太陽や星に呼びかけ、地球と対話していました。星々に全存在を想い、星座の幻想に空想の翼をひろげて、大宇宙を翔けめぐり星々の運行に自分の運命を感じ、過去の生活を想い、死後の生活を予感しました。宇宙の快活さと自然の自由は彼らのものでした。道徳も規範も大宇宙の律動と呼応し、魂は全宇宙を内包するほどの豊かさをもっていました。
しかし、現代人の多くは意識的はこうした生命感覚を忘れてきたとはいえ、心の奥深くの潜在意識層に今もなおその生命が脈々と流れていると思います。人間の霊的生命の貯水池は深くて大きいものです。現代人はこの魂の水を涸らしてしまっていますが、これを満水にすれば、たちどころに宇宙霊の強大なエネルギーが奔出してきて世界を変える力の源泉となりえます。
宇宙の根源的エネルギーと人間の生命エネルギーを和合させることで、枯渇しつつある霊的ダムを満たすことで新しい霊的文明が構築されてきます。新しい地球文明の創造はこうした霊性心を核として建設されて行くと思います。
21世紀は行き詰まった理性心を超え霊性心の方向へ進化すべき時となっています。人間は本能的、理性的であるだけでなくそれ以上の霊性的でもあるからです。霊性心を煥発させ宇宙霊と一体になることで地球文明が創造されてきます。霊性心は宗教や民族や国境を越えた普遍的な宇宙の心ですから地球文明を支える礎になります。
そして、人類の責務は宇宙の根源に織り込まれた霊性心を土台にして、かけがいのない母なる地球を、最も進化した惑星として美しく輝く宝石になるまで建設してゆくことにあります。
ここに天風哲理が、地球の運命を背負い、宇宙の空間に毅然と立ち続ける巨人アトラス像の如く堂々と登場してきます。アトラスは地球の運命を背負って大宇宙の空間に立つことで、はじめて忘れていた自身の霊性心を再発見することになります。霊性心の復興とは魂のルネサンスでもあります。
天風哲人は大きな信念をもって;
「諸君にいいたいのは、恵まれた幸運に、いい気になって、自己研磨を怠ってはいけない。
やがて21世紀が来たら、思想的にも、アイデアに方面にも、必ずや、世界をリードする
だけの権威ができると、私は確信している。」
「私が三寸息絶えて、何百年の後に、世界中が、みな宇宙霊との一体の
実行者に、必ずなると確信を持っている!」
いかにして宇宙霊と一体となり霊性心を渙発することができるのか、
それでは、「天風の五輪書」に入ることにします。
(教会の前で地球を支えるアトラス)
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