「得一日過一日」(一日を得て、一日を過ごす)は、昭和28年に天風師が書かれたお軸です。
天風会京都支部に昭和27年3月に入会された古参会員の伊達静様が、家宝として所蔵していたもので、私が2003年11月に伊達家を表敬訪問した折、京風のお屋敷に掛けられていたお軸でした。
「もしよろしければお持ちなされ」と言われ、果たして頂いていいものかと躊躇しながらも、ご好意に甘んじて持ち帰り、自宅の寝室に掛けて毎朝黙読していました。(伊達静さんは天風先生より長生きしてしまい申し訳ないと言われていましたが102歳で天寿をまっとうしました)。
先日のこと、1985年に知人の紹介でニューヨークを訪問した方が、ホテルのロビーで初対面の私に「天風誦句集」をくださいました。その誦句集は、その後の私の人生に大きな影響を与えました。
その恩人から「今年に入って10時間にもおよぶ心臓の大手術をし、死線をさまよい名医に命を引き上げてもらった」と連絡を受けました。目下リハビリ中で、元気を取り戻しつつあり、医師から車の運転も許可されたとありました。すごい生命力です。
翌朝、私が打坐していた時にふと閃きがあり、このお軸は私よりこの方にこそ相応しいと思い至り、さっそく恩返しの思いを込めてお贈りしました。
70年の時を経て、伊達様から私に、そして、いま時を得て恩人に渡りました。あたかも天風師が生きているかのようです。
先方から「一日千秋のおもいでお待ちしております」、「届きました。開けました。見とれました。床の間に掛けました。感激です。正にこの掛け軸と一心同体の毎日です。心から感謝いたします」と、連絡を受けました。