天風道八十年(続)

 山田.jpeg 今回も「天風道八十年」になります。
 考えますと、剣道、柔道、華道、茶道と「道」が付くところから天風哲理の心身統一法を「天風道」としたのは、言い得て妙で奥深いものがあります。著者が実践を通して浮かびあがってきたもので、まえがきに「天風道に学んで歩む真人生」とあります。
 著者が古希を迎えてとりかかつた自叙伝に、「ベスナー写真館」と「まぼろしの楽土・満州」(1988年刊)があります。これと「天風道八十年」の第一部を加え自叙三部作になっています。著者が厳しい実社会のなかでどのように天風哲理を活用して天風道を歩んだかを自叙しています。ただ人それぞれに一生があり、それぞれ違った人生を歩むわけで著者の経験をそのまま追従できませんが、先人が歩いた天風道として貴重な参考書になっています。
 私がここで再版を希望したのは自叙伝の部でなく「天風道八十年」の第二部「深遠なる心身統一法」の
会員向け書かれた教材です。内容に重複した箇所があるので再編集して小册誌にまとめるか、「志るべ」誌に連載した後に教材になればと考えました。
 教材として際立った特徴は、天風師直伝の「コツ(要領)」を開示していることです。少し長くなりますが幾つかを整理しますと;
 <クンバハカ法のコツ>;
 
両手の小指を締めると肛門が締まり、肩の力が抜け、両足の親指を締めると下腹に気がこもる。
 熟練すると四本の指のうち一本でも軽く締まっていれば、無意識のうちにもクンバハカを持続でき、この習慣を体に覚えさせて身につけば、睡眠中でも自然クンバハカができるようになります」。 
 これはとても有効な方法でして、私はこの「コツ」でクンバハカ体勢をより確かなものにしました。


 <安定打坐法のコツ>;
 自己催眠の要領で一心から無心に入り、宇宙霊を念じて一体化し無限の活力流入を意識します。
1、ブザーや鐘の音が消えてゆくのに合わせ無我無念の境地へ
2、音が消えた後、雑念を防ぐために印を組む四本の指の脈を一つに感じつつ無我無念を持続する。
3、四本の指の脈を一つに感じたら、眉間少し上の骨の凹みに寄せる気持ちで意識をそこに集中させて無我無念の境を持続させる。その際に眉間の縦皺が入るのを防ぐために両眉を軽く吊り上げておく。
4、こめかみの辺りに緊張感が漂い、耳にシーンと微かな音(空の声)が聴こえ無我無念の境を感得できる。
5、クンバハカをしたまま「宇宙霊と一体なり」と念ずると、全身にジーンまたはピリピリとしびれるような感じが走り、すごい力が湧いてきます。
6、宇宙霊と一体化(神人冥合)を再度試みる。

 眉間に意識を集中させる要領で、安定打坐法をわかりやすく説明しています。
 眉間(第三の目)に意識を集中し、鼻から息を吸い込むと脳の奧の松果体に活力が吸収しメラトニンが分泌され、活性酸素の細胞破壊を抑止し、老化現象やアルツハイマーを防止すると説いています。
 コツとして鼻から呼吸をする時のみ眉間に強く意識を集中させる。眉間は「命の窓」であり、両眉の間から少し上の骨の凹みで、その頭蓋骨のつなぎ目の隙き間から活力が出入りし、直感の受け入れも可能になります。
「自分より強い相手と対等に以上に対応するには、相対クンバハカ体勢を保ちながら、相手の眉間を時々見て話しをすると相手と同化できる」(天風述)

 <無我一念法を安定打坐と併用>;
 初心者はいきなり安定打坐に入る前に、無我一念法を安定打坐と併用することをすすめています。
 無我一念法で視覚を通しての打坐法でして、名刺大の白紙に直径5
mmくらいの黒●に数秒間凝視して目を閉じ、まぶたの裏に白○の残像が浮かぶことで精神統一をはかる方法です。
 こうして坐禅とほぼ同等の精神統一状態が出来た後に安定打坐に入りますと初心者でも無心をつかむことが容易となり、大きな効果が得られるとしています。


 <音無の安定打坐>;
 電車の中、喫茶店や会社などでブザーや鐘の音がない時の安定打坐法として;
1、軽いクンバハカ体勢で両手を組合せ両親指の先だけ軽く合わせそこに意識を集中し両指の脈を感じていると雑念が消えてゆき「一心」が維持できる。
2、「一心」になったら意識を眉間に移して「無心」へ入ってゆきます。当初は閉じている両目を軽く眉間に寄せ眉を軽く吊り上げて持続を試みる。
3、こめかみ辺りにジーンという感じが起こり、耳にシーンと微かな音が聴こえてきます。天風師はこれを「空の声」と言ってまして、なんともいえないよい気持ち(トランス=三昧境)になります。
4、この境地になると「本心が煥発」されて自然に大きな不思議な力が体内に流れ込んできます。
 この要領で平素から怠りなく「一心→無心→本心」の間を往復させる訓練しますと、いざという時にクンバハカが決まり、目を閉じ眉間へ意識を集中すれば即座に無心になれ、宇宙霊の大きな力が流れこんできます。「我は宇宙霊と一体」となり「不孤」として奇跡的な命拾いしたり不思議な霊感がわいてきたりします。

 <瞬間安定打坐法>;
 非常事態に遭遇した場合、とっさに無心から本心の煥発に入るコツは両手の親指を中にして軽く握り、両小指を締め、両足の拇指を曲げしめるとクンバハカができます。同時に両眉を上げますと虚心平気になります。
 眉を上げたまま意識を眉間に集中させて、鼻から静かに息を吸い込むと無心のうちに強力な活力が導入され、この時に宇宙霊を念ずれば本心が煥発され、早急に霊感が湧いてきてその場で最適な行動がとれるようになります。
 天風古参会員の写真をみますと、みな親指を中にして軽く握り両小指をしめた姿勢になっています。

 その他にもさらに幾つかの法を開示していまして:
 <ストレス撃退法>
 *眉上げ法
 両方の眉を吊り上げると気持が広々とし浩然の気が湧いてくる。

 *吹き消し法
 目と口を閉じ、息をプッと吹き出し、首をひとふりし両眼を開く。


 <クンバハカ法+養動法+眉間呼吸法>
 <プラナヤマ法+眉間呼吸法>
 著書は一貫して眉間の重要さとその活用を繰り返しています。

 <活力吸収法と活力移送法>
 *自己移送法、
 普通の局部移送と全身移送、非常時の局部移送と全身移送。

 *多面移送法、
 普通の局部移送と全身移送、非常時の近距離移送と遠距離移送。

 活力移送法は熟練者の領域になりますので、エッセーでは省略しましたが、教材は人のために役に立つ多面移送法を丁寧に教示しています。

 <本心煥発と宇宙霊一体化>
 「無心になれば本心煥発は自然にできます。初めは心のうちに宇宙霊をたびたびひたすら念ずればよい。そうすると不思議な力が主に眉間から流れ込んできて、ジジーンというしびれのようなものが全身を駆け巡り、身体の奥底からモリモリと力が沸き起おこってきます。これを本心の煥発(神人冥合)と思えばよいのです。無心の境でのクンバハカ体勢は、本心を煥発して宇宙霊との一体化を実現します(昭和十一年、天風述)」

 以上、「深遠なる心身統一法」から天風直伝の「コツ」を抜粋し整理してみました。いずれも天風道の実践にそのまま役にたつ教材になっています。

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この記事について

このページは、三休が2015年9月22日 00:07に書いた記事です。

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