令和のはじめはご祝儀読書で、徳仁親王述「水運史から世界の水へ」(平成31年4月NHK出版刊)でした。
「水の恵み、水と地球、水と私たち」は、新天皇陛下ご即位の記念出版になりました。アマゾンではやくもベストセラーになっていまして直ぐに取り寄せましたが初版本を逃しました。書評は控えますが、陛下の全地球的な視野、目線のやさしさ、バランスのとれた格調高い天晴れな著書でした。
天皇陛下は登山を好み、これまで170余の山に登られたことは知っていましたが、水に関してここまで学術的に深く研鑽されておられたことを初めて知りました;
「八ケ岳は私の好きな山の一つで、最高峰の赤岳をはじめとして、今まで3回ほど登っています。実際に登ってみるとよくわかりますが急峻な地形です。登山の際に湧水『乙女の水』を口にしましたが、大変冷たくておいしい水でした。」
「乙女の水を口にするお姿」、なんとも詩的で現代の神話を読んでいるかのようでした。
水を分かち合うことの大切さ、江戸時代から使われてきた山梨県にある「三分一湧水」の分水池に、農民が置いた「水分石」施設を紹介しています。そして今日でも日量約8500トンという豊富な湧き水を、地域に三分の一ずつ分けて、豊かな農業を支えていると説明しています。
「川から眺める景色は、陸上からのそれとはまた違った広がりを持つ良いものです。日本でも人々が水に親しみ、水上交通が改めて見直されることを願うとともに、日本に限らず世界の川や湖がその美しさを今後も保っていかれることを願っています」。
またここに「令和」を考案した中西進の「万葉集全訳注原文」から、大伴家持の雨乞の長歌を引用し「万葉の時代、渇水に苦しむ人々は、空に浮かぶ白雲を仰いで雨乞したのでしょう」と偲んでおります。
締めくくりは前田普羅の俳句;「立山の かぶさる町や 水を打つ」を紹介し、「立山が覆いかぶさるようにそびえる富山の町で、人々が夏の暑さをやわらげるために通りに水を打ち涼をとっている」日本の原風景で結んでいました。
いずれもが令和の観光名所になることでしょう。
水運史から世界の水へ
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