スポーツが商業化されているなか、4月のボストン・マラソンでアマチュアの川内優輝選手の優勝は、世界でただ一人と欧州メディアで驚きとともに称賛されています。スポーツはプロだけのものでなく、本来こうあるべきという欧州のスポーツに対する成熟度がうかがえます。
私の4月は、ウルトラ・トレイル・マウント富士、UTFM170キロのサポーターでした。このレースにもこうしたアマチュア走者1480人(男1230、女250人、内外国人230人)がエントリーし、この他にも抽選にもれた人が2000人といいますから驚きです。
彼らはエントリー費2万8千円、交通費、宿泊、諸経費すべて自費で参加しています。完走しても何の公式記録になるわけでなく、完走記録の時間が書かれた賞状とトレーナ・チョッキ1枚というものです。常識から考えますと、呆れて溜息が出るほど信じられない馬鹿らしさで、開いた口がふさがりません。にもかかわらず、なぜ彼らはこんな馬鹿らしいレースに喜んで挑戦するのか、いまだに理解できずにいます。
なかには100キロ地点を泣きながら走っている女性を見ましたが、彼女は辛くて泣いていたのか、嬉し涙なのか全く理解できません。また完走のテープを切った時に、多くの選手が目に涙を溜めていましたが、これは達成感からくるドーパミンの幸せホルモンによるのか、私の理解を遥かに越えたことばかりでした。
本来スポーツの語源の由来は「気晴らし」「楽しみ」「遊ぶ」ですから、彼らは馬鹿らしさを承知で、それでも走るのが好きなのでしょう。それがサポーターにも心地よく響いてきました。人間の脳内には損得だけでは推し量れぬ何かがあるようです。
山路来て 何やらゆかし すみれ草 (芭蕉)
170キロトレイル(1)
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