自裁死した西部邁氏の四十五日も過ぎ、思想的な騒ぎは静まったので述書「保守の真髄」を読んでみたが、専門的外来語の乱発でさっぱり頭に入ってこない。何度も中断しながらいまだに卓上に置いてある。
そういえば氏の「国民の道徳」の700ページの大作も読まずに本棚に置いたままになっています。にもかかわらず、今日また西部氏の「保守の遺言」を購入してしまった。たぶんこれも読まずに本棚になると思うが、蔵書にして置きたい著書もあるものです。
このような論調なら私は学生時代の恩師である文明史家の野島芳明氏から脳裏に叩き込まれていました。西部氏は60年安保のリーダー崩れの保守論客、野島氏は特攻予備隊崩れの保守著述家、出自の違いはあるが西洋思想の流れを基盤にした思想に類似性がみられます。ですから私は強いて西部イズムを読まなくも、野島イズムでこと足りていたのだと思う。私の不勉強と思想の狭窄性にあると思うが、本との巡り逢い、すれ違いも縁という相性なのでしょう。
仕方なく先週末はユーチューブで氏の講演を拝聴して過ごした。たしかに平成の世に反近代の保守真髄を代表とする思想家でした。氏は戦後75年、特に平成の世の日本文化の低落を糾弾し続けました。文化人として三島由紀夫氏は昭和の偽善に耐えられずに殉死し、西部邁氏は平成の欺瞞と衰退に耐えられず自裁しました。
しかし、氏が自裁した後も相も変わらず、森友問題に見られる朝日新聞を始めとしたマスメディア、野党政治家、官僚の低落はそのまま日本の衰退を加速させています。
「保守の真髄」の横帶にある氏の最後の遺言を謙虚に受け止めたい;「世界恐慌、世界戦争の危機が見込まれる現在、政治や文化に関する能力を国民が身につける必要がある。そして良き保守思想の発達した国家でなければ、良き軍隊をもつことができないのである」。
保守の真髄
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