「チャーズ」を読み終えた勢いで、本間典子著「流転の子」の450ページの大作を読んでしまった。「流転の子」は「流転の王妃」満州国愛新覚羅浩の次女「嫮生(こせい)」の半生(現在77歳)を描いたノンフィクションです。
同時期に「チャーズ」の遠藤誉女史は、7歳で長春市から一市民として脱出、嫮生は5歳で長春市から満州族皇紀として逃亡でした。よりによって同じ運命の少女ストーリーを読んでしまった。どちらも敗戦動乱の地獄を見ていました。
私の中国研究は1966年の文化大革命から始まっていましたが、どうやら満州国まで遡ることが必要ようです。ここまで遡ると今の中国がより深く見えてきました。
かなり専門分野になりますので本はお薦めしませんが、著書は「真心に国境はない」として「日中友好」にスポットを集中させていました。それはその通りなのですが、中国認識の薄さで「漢族」と「満族」の相剋の論及がなく、満族が漢族として生き長らえる葛藤と屈辱の素描がない。そのため著書には一行も書いていない一番大切な本質が抜け落ちていました。著者はたぶん無意識ですが、この本は漢族に滅ぼされた満族滅亡の鎮魂の書でした。
嫮生が中国に残らず日本人との結婚を選択したことで愛新覚羅皇帝一族は途絶えます。もし、著者が清王朝と満州族滅亡のレクイエムを意識して書かれたら一級の名著になりました。若い著者にそこまで要求しても無理なことで、すでに優れた力作に敬意を表しますが、欲目として惜しい名著でした。
流転の子・愛新覚羅嫮生
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