「月日は百代の過客にして、行かう年もまた論客也」
ほんの一昔前までは、私より若い人の著書を読むたびに「若僧に何にがわかる」かと抵抗を感じてましたが、今ではみな若い著者になってしまい、いつの間にか論客が世代交換していました。それに私自身も若僧の本を読むことに何の抵抗も感じなくなった、トホホ。
そんななか加瀬英明vs石平対談「日本の奇跡、中韓の悲劇」を読み終えました。加瀬氏は80歳になり、いぶし銀の日本文化論を展開して、氏の独壇場で石平氏は脇役のミスキャストで対談になっていない。
最近の出版物は目の前のギラギラした評論ばかりで、こうした悠長な文化論の語る論客がめっきり少なくなってしまった。定期購読していた月刊「文藝春秋」もつまらなくなり、ここ8月、9月、10月号は購読していない。
そして加瀬氏の時を超えたスローペースのズレにつられて、読みはじめては寝てしまい、読んでは寝てわずか200ページの対談本を、悠長に味わいながら1週間かけて読み終えました。
「日本は物事を美しいか、美しくないかの感性で決めます。理屈ではなく、美が大切なのです。論理は危険な刃です」と、言っていますが、これは最近の脳科学でも、美意識と善悪の判断は脳の後ろ側の同じ場所で働くとしています。美のあるところに調和あり。こうした著者を、お爺すて山に捨てることなく熟年の叡智を参考にしたいものです。
熟年の論客
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