戦争にチャンスを与えよ

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51-QbGgcNXL._SX311_BO1,204,203,200_.jpeg 緊迫する北朝鮮問題のおり、米戦略国際問題研究所の上級顧問、戦略家エドワード・ルトワック著「戦争にチャンスを与えよ」を読んでみました。ベストセラー「中国4.0」の著者でもあり、安倍首相とは5度にわたりランチ・レクチャーするアドバイザーです。
 第5章「平和が戦争につながるーー北朝鮮論」は、著者の2016年10月時点のインタビューですが、北朝鮮の軍事力が一定の限界を超えたことを前提に、日本の選択を論じています。
 「日本は平和慣れして、脅威が眼前にあっても、われわれは人事にように『まあ大丈夫だろう』と考えてしまう。脅威が存在するのに、誰も備えの必要も感じない。むしろ戦争に備えること自体が問題になる。そうして行動のための準備は無視され、リラックスして紅茶でも飲んでいた方がよい、ということになり、そこから戦争が始まるのだ。平和は戦争につながる、なぜなら平和は、脅威に対して不注意で緩んだ態度を人々にもたらし、脅威が増大しても、それを無視する方向に向けさせるからだ。日本にとって、その典型が北朝鮮問題だ」と、弁解の余地なく手厳しい。実際いまになっても米軍頼りで人事のような有様です。
 著者はここで日本の選択肢として、「融和(降伏)」「先制攻撃」「抑止」「防衛」4つの戦略を提示していますが、「現実にはどれも選択せず、何かしら行動を取らねばならぬのに『まあ大丈夫だろうと』という極めて危険な態度である。この態度こそ、平和を戦争に変えてしまうものなのである」と、警鐘しています。
 まだ危機は継続しますが、日本は隣国の威嚇に対して核を保有せぬひ弱さを露呈しました。でも危機が過ぎればやはり「まあ大丈夫だった」と能天気ですが、この機会に「金」を取って詰ませぬと、中途半端では将来に禍根を残すことになる。
 第9章「もし私が米国大統領顧問だったら」(2016年10月時点のインタビュー)では、トランプ大統領の勝利を予言し、ビザンティン帝国の戦略論を披露し、トランプの今の外交政策を先取り予測していました。
 また8章「戦争から見たヨーロッパ」で、「戦士の文化」の喪失と人口減少論で「男は戦いを好み、女は戦士を好む」精神を喪失してから少子化がはじまり、ヨーロッパの没落がはじまったとの慧眼には目から鱗でした。これは日本への警鐘でもあります。
 それにしても、キッシンジャー、ブレジンスキー、この著者といい、なんでみな戦略家がユダヤ人なのか。
 「戦争にチャンスを与えよ」、ゴールデン・ウイークに是非のお薦め本です。 
 さて緊迫した4月が過ぎるようです。5月も緊張続きますが、よい月にして行きましょう。

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このページは、三休が2017年4月28日 00:30に書いた記事です。

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