2015年5月にNHKスペシャルで放映された「天使か悪魔か」の番組が、羽生善治/NHK取材班著「人工知能の核心」の題名で、本になりましたので読んでみました。日本の知性を代表する天才棋士が人工知能をどう捉えているのか興味を持ちました。
人工知能は「諸刃の剣」実にするどい剣で、「天使か悪魔か」、20世紀は核のコントロールが人類のテーマでしたが、21世紀は人工知能に取って代わり、2045年に人工知能が、人類の知性を超える技術的特異点に到達すると予測されています。
現代社会はIQ100くらいを前提に構築されているが、外付けハードディスクやスマートホンなどIQ4000の人工知能を持ち歩ける近未来に人類はどう対応するのかという問題提起でした。
人工知能と羽生永世名人が対局したらどちらが勝つのかという問に;
人工知能は学習した通りに駒を進めるだけで恐れを知らないが、人間は恐れ迷う分だけ不利になるとし「人間の思考の死角や盲点のようなものは、防衛本能や生存本能に由来して、生き延びてゆくために危険な選択や考え方を、自然に知性から排除してしまう習性がある」と認識していました。
興味深いのは、著書のなかに「美意識」という言葉が何度も繰り返されていたことです。人工知能と対局しても美意識を感じられない。もとより共通理解すべきプラットホームが違い、機械の「記録」データと人間の「記憶」ソフトに違和感があり、勝ち負け自体に意味がないと相手にしていません。そして棋士が駒を進めるときの「直感」ー「読み」ー「大局観」ー「見切り」の流れのなかに勝ち負けを超越した「美意識」を希求していました。棋盤の局面は美しくあれとしていました。
人工知能はこれから飛躍的に向上してゆくなかで、人間は人間であるべきのみならず、人間も同様な知能の飛躍が求められてきます。羽生氏が奇しくも言われた、人間特有の「美意識」、「真(誠実)善(愛情)美(調和)」、ここらあたりに人工知能に対応するヒントがあるのかも知れません。
人工知能vs美意識
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