物好きや 匂はぬ草に とまる蝶(芭蕉)
アメリカのテレビにセチュエーションコメディーという番組がある。レストランを舞台にして常連客が入れ代わり立ち代わりおりなすドタバタ・ドラマです。
私はここ1年余り毎週金曜の朝、出勤の途中に決まったダイナーで朝食をとっています。ここでもいろいろな常連客の人生ドラマが見られて面白い。
先ずオーナーはメキシコ人、昔はギリシャ人が定番でしたがこれも時の流れ。愛想のいいウエートレスはタイとフィリピン人のハーフで亭主がイタリア人。いつも亭主とツーショット写真のネックレスをつけています。お客からの虫除けのつもりなのかも知れない。
1年中どんな暑い夏でも茶系色の分厚いレインコートを肩にかけ、口髭で同じシャツに同じネクタイをして、タバコを吸いながら入ってきてカウンターに座る人、私は彼を「カサブランカの男」と命名している。
知的障害の2人の子供と生活保護係の人、さえない医者と看護婦、大きな声で話す黒人夫婦、極めつけは乗って来る車の中が、運転席以外は隙き間なく天井までゴミ、ゴミで、ゴミ箱同然の車。空き缶から菓子の空袋、汚い洋服、帽子等々、私は彼を「ゴミ男」と命名し、この車から離れ所に駐車しています。
よくもまぁそろいもそろっておかしな人たちです。なぜこのダイナーで朝食なのかと思うが、実はここが私のアメリカでの原点のダイナーなのです。渡米して創業の頃よくここで朝食してから会社に行きました。
最近ちょっと思うことがあり、物好きにもこの原点で食事したい気分になり再開しました。たぶんこのダイナーのなかで、私が誰よりも古株だろうと思う。かつては各テーブルに小さなジュークボックスあったことなど誰も知らないと思う。
いろいろなクセのある常連客をながめ、私だけまともかなと思っていたのですが、今朝ふと考えたら彼らも私を見てクセのある常連客の1人に思っていることに気がついた。ダイナーに入るといつも同じボックス席に座り、メニューももらわず、注文もせずに、「おやよう。いつものよろしく」だけを言えば、コーヒーとエッグベネデクトがでてきます。飽きもせずいつも同じ食事なのです。
朝食を終えて会社に向かう車の中でふと、たぶん彼らから君の名は。「ベネデクト男」と言われるのだろうと思いついたら、可笑しくなってきて吹き出してしまった。時だけが流れ、私は相変わらず同じダイナーの舞台で「通りすがりの人」を演じていました。
君の名は。
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