アルプスの山々が天からの光で雪が溶け、峡谷から滝となり渓流へ流れ、ライン川の上流としてトーマ湖からボーデン湖へと入り、国境を越えドイツ、フランスへ、さらに北上し全長1,233キロを流れ、オランダのロッテルダムから北海に注いでいます。
この豊富な水はアルプスの人々の命の泉であり水浴にもなります。ホテルの主人は自信たっぷりに、「この天然水はエビアンより上質でとても美味しい。あなたはこの水でシャワーができます」と説明していました。
たしかに高い渓谷から流れ落ちる壮大な滝をみてしまうと、那智「飛瀧神社」のひとすじ滝が心細く思えてきましたが、私は「日本ならこの滝の前に鳥居を建て御神体として祀るし、奈良の「大神神社」では三輪山そのものを御神体にしています」と説明してやりました。
神道では宇宙創成の時に働いたエネルギーが、山々、滝、河川、湖などに生成し、それが人間の生成にも働いているという、自然と人間との一体感の信仰からきています。フランフ人アンドレー・マルローは「那智の滝の精神は、つねに下にいる人間と上にある空との対話だ」として、これを「アマテラスの感情」と称しました。冒険家でもあったマルローはスイスで多くの滝を見ているはずですが、なぜスイスでなくて那智の滝に感銘を受けたのだろう。それは日本の文化が自然そのままの生育であり、天上からひとすじ流れおちる滝をみて宗教感情にまで高めた崇高な精神に響動しての事と思う。
スイスでもキリスト教が入り込む以前は、アミニズムとして山々や河川に精霊が宿っていたはずです。アルプスの裏声で歌うヨーデルは、山の神々との対話だったし、山々の神々がこだましての唱和でもあったと思う。そうなければ、アルプスの少女ハイジが都会で患った鬱病からの快復、歩く事のできなかった友人クララがアルプス来て歩きはじめた奇跡は理解できません。
こうした精霊はいまでも「アルプスの夕映え」の調べなかに彷徨していると信じたい。もういちどヨーデルを歌い神々を黄昏から呼び戻どしたいものです。もし、スイスが日本から学ぶものがあるとしたら、マルローが称した「アマテラスの感情」ではないかと思う。
アルプスの夕映え
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