いま東京で「公費」と「私費」の仕分けが問題になっています。
私が経営者になってよかったと思うことの一つに、「公」と「私」の分別を身につけたことです。簡明に言えばお金の使い道に敏感になりました。このお金はどこから来たのか、いま使うお金はどの費用項目に入るのか、公費か私費かが特に意識しなくも習慣的に頭の中で働いています。
会社のお金は会計係に一体任せて手をつけません。普段は公費と私費のクレジットカード2枚と現金を持ち歩き、使い道によって仕分けしています。金額によりますが通常は領収書を受け取らずカードの決済書で、あとは会計係に任せています。現金での公費使用の時には領収書で決算しています。そして何か費用でおかしな点があった時にのみ、会計係の仕事として私に質問してきます。
通常、私は気を許した人以外からの接待を受けず、たいがい接待側なのですが、接待した時でも話した内容次第で公費か私費のカードで仕分けています。タクシーに乗った時でも、公はカード、私は現金を使っています。二次会の飲み代もだいたい私の現金になっています。
公費は厳しく節約したとえ10円でも無駄なきように努め、常になぜ使うかを自問しています。例えば高速道路通行料でも同じ目的地に行くのに2通りあり、この道は2ドル50セント、別の道は3ドルだとしますと、習性的になぜ50セントを余分に使うのかを問いかけます。この道は近道で50セント節約できるが、常に渋滞が予想され、別の道は50セント余分だが、渋滞も少なく早く到達できるとの理由があれば50セント余分に使います。私はゼロから叩き上げた会社なので、50セント節約がそのまま損益表のボトムラインで50セントの利益に直結するのが骨身に沁みているからです。
こんな事は経営者とり当然のABCですが、問題は機密費となります。今で言う政治資金と言うものです。通常どう使おうとわからないわけですから、この使い道にはなおさら神経を使いますし、自制心が要求されます。経営者が真に試される必要条件です。
私はこのお金を私用で使ったことは一度としてありませんでした。海外にいるパートナーが、一度だけ私の使い道を疑ったことがありました。機密費の使い道は、お互いの信用関係で成り立っていまして、海外に離れていればならなおさらです。しかし、これには領収書や使い道を証明する裏付けが無く、信用は心の度量だけとなりました。
私はこの時点で20年間続いてきた大恩人のパートナーでしたが、きっぱり見切りをつけ全てを清算して別れる決心をしました。大恩人のままにしておきたかったからです。その折り彼は、これは私の人生の失敗であるとして留意しましたが、「無信不立」(信なくば立たず)でした。
信なくば立たず
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