『安らかに眠ってください
過ちは繰り返しませぬから』
原爆死没者慰霊碑に刻まれた言霊、長い間にわたり主語がないとされてきましたが、今日その主語が哀悼にきました。
潜在意識に主語はありませんから、祈りを捧げている「あなた」も主語になります。これは神社の奥に置かれている鏡にも通じ、神前の鏡に映し出された「あなた」の実相に向かって祈るというものです。
朝食のレストランで、未来志向の歴史的瞬間、主語が抱擁し被爆者がみせた微笑に、芥川龍之介の短編「ハンカチ」が想い浮かんできて、こぼれ落ちそうになる涙をナプキンで何度も隠しました。
芥川龍之介の「ハンカチ」は、息子を亡くした母親が、恩師だった外国人教師に死を告げにきた時に、母親がみせた穏やかで微笑さえ浮かべて淡々と話す姿を不思議に思い、ふとテーブルの下に目をやると、膝の上に悲しみをこらえて握りしめていたハンカチが激しくふるえていたのに気づき感動したというお話しです。
取り返しのつかない過ちに、死ぬほどの深い悲しみを胸に秘めながらも和顔のうちに「よく来てくれました」と寛容しかないのです。今を生きるふたつの命が、被爆地で一緒に祈るという鎮魂の儀式でした。
ある者はここで謝罪を要求したようですが、立ち入りたくない相手の心の中に押し入り、どうこうせよと指図すべきものでなく、善悪の采配は天に任せて、ここはただ黙ってテーブルの下で握りしめていた声なき声のハンカチに想いをはせて合掌です。
「磨ぎなほす 鏡も清し 雪の花」(芭蕉)(アメリカでも一面のニュース、明日はメモリアル・デイー)
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