久しぶりに今週末は読書して過ごし、3日間に5冊でしたから爆読でした。近著の中国関連書と私の分析の距離を目測してみたが、さしたるズレはありませんでした。まだまだ中国ウォッチャーとしていい線いけそうです。来月またその後の様子を観てきます。
5冊目は前から気になっていた「五色の虹」ー満州建国大学卒業生たちの戦後ー、三浦英之(集英社2015.12刊)を読みました。歴史のなかに埋没した満州国最高学府、日本、満州、中国、朝鮮、ロシア人よる「五族協和キメラ満州国」のエリートの育成を目的に設立された建国大学と卒業生の戦後を描いています。
著者が42歳という若い朝日新聞の記者なので、いかがなものかと思いながら読み始めたら、どんどん引き込まれて一気読みになってしまった(して今日は会社で春眠暁を覚えず)。
最後の機会になると思われる、生存している卒業生の時代に翻弄された人生を訪ね、日本の各地、大連、長春、モンゴル、韓国、台湾、中央アジアのカザフスタンに飛び、現地でインタビューしたノンフィクションです。
彼らに共通していた想いは、戦後65年(現在71年)の時が過ぎ、多くの人がすでに鬼籍に入り、今日まで生き長らえし方も、じき人生を終えるためか、満州と建国大学で学んだ若き頃を懐かしみ、やり直しのきかない自分の人生に達観していました。最後の訪問先になったガザフスタンで、ロシア人卒業生がこの物語を結んでいました;
「私が日本を心の中にずっと留めておくことができたのは、ここにたくさんの山があったからだと思うのです。私はこの山々をみながらね、よく『おっ、あの山は富士山に似ている』とか、そんなことを考えておったのです。日本人はみな、特に満州で暮らしていた日本人は本当に富士山が大好きでしたから」「満州で生まれた日本人の中には富士山をみたことのない人がずっと多かった。でも(中略)日本人にとって、富士山は故郷の象徴なんだということがわかり始めたのは、私が建国大学に入ってからでした。富士山は山ではない、天皇陛下と同じく、日本人のアイデンティティーなのだと。そういう精神的な側面を理解できた頃から、私も富士山が好きになりました。私は日本や日本人が大好きでしたから」
富士の上にかかった五色の虹は、彼らとともに儚く霧散しました。
満州、五色の虹
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