(ピエロよりドンキホーテに近いかも)
予備選が熱くなってきて、一昨日トランプのフロリダ集会にヒスパニック系のデモ隊が進入して一時中断、昨日はシカゴの集会で支持派と反支持派の小競り合いがあり中止、今日はオハイオでも中止になりました。予想されていた通りトランプが煽動した分断現象です。
私は最近よくアメリカは変色したと口にするようになっています。予備選を機に一体いつ頃から変色したのかとふりかえってみました。大きな変色は総人口が1980年の約2億2千万人から2015年のわずか35年間に、約3億2千万人になって行く過程で静かに変色して行きました。うち人口構成は、白人67%、ヒスパニック系15%、黒人13%、アジア系5%で、新移民によって増加しています。
貧しい移民は低所得層の白人や黒人から仕事を奪い、高学歴移民はコンピューターを武器にして白人中産階級の職を奪ってゆきました。多くの新移民は勤勉かつ優秀なため先住アメリカンの地位を脅かすまでになりました。かつて白人が先住インディアンを駆逐した様にです。
この社会の変色が短期間に静かに進行したため、既存政党が改革をを怠ってしまいました。3億の人口増加に政治システムが立ち遅れて対応できてないわけです。ここでトランプが「白人優先社会の復権」を旗印に出てきました。あたかも35年前の風車に向かうドンキホーテの如くにです。
また変色の兆しは1993年のクリントン大統領と金融街の癒着と女性スキャンダルの法逃れから始まりました。それが翌1994年にO.J.シンプソンの妻殺害事件に象徴されました。金で優秀な弁護士を雇えば有罪でも無罪にできることで、道徳と法の正義がゆがめられました。マネー万能で法さえ逃れれば、何をしても構わないという道徳の頽廃です。
この傾向がウォール街でも顕著になりました。かつての経済理論、マルクス経済やケインズ経済にしても、その根底に暗黙のうちに神が存在し良心がありました。しかし、冷戦に勝利した後の新自由主義経済は神不在の資本主義になり、市場経済原理、経済自由主義、自由貿易、規制緩和などは拝金主義の後付け理論でしかなくマネー至上主義になりました。お金がすべてを計る尺度となり、人間の尊厳や優劣も所得額で判断する風潮になりました。その結果として所得格差が拡大し上流層が20%、中間層が50%、下流層30%からここ10数年にさらに拡大し、中間層が減少し下流層が増加する二極化が進行しています。一説には1%の超上流層が全所得の40%を占めているという歪んだ社会になっています。これは最近よく耳にする"Poor white"(プアーホワイト=没落中産階級)の造語に象徴されています。このプアーホワイトの増加現象は、1990年代から2010年にかけて急激にコンピューターと携帯電話が普及し、世の中がデジタル情報化社会に移ったことと平行して進みました。
一方、外交面の変色として2014年から大量発掘されたシェールオイルにより、アメリカは40年来の石油輸入国から輸出国になったことで、中東石油外交の比重が軽くなり、外国での紛争の疲れもあり一国孤立主義の傾向が強まってきました。
こうして、政治、経済、外交、社会に変色が静かに進行したため、迂闊にも私自身その変化に気がつきませんでした。私が変色に気がついたのは、2009年に「チェーンジ」をスローガンにして黒人初のオバマ大統領が登場した秋(とき)でした。その彼もウォール街に寄り添いさしたるチェーンジもせぬままじき退場します。そこで今度はトランプの白人社会の復権へ「チェーンジ」です。そしてそれを阻止しようとする2人のヒスパニック(キューバ移民)が奮戦しています。4年後の予備選にはインド移民から出馬が予想されています。
南北戦争をのり越えてきた若き民主大国アメリカが、いま星条旗の下で協調繁栄して行く棲み分けの道を試行錯誤しているところです。ここはリンカー大統領ようなリーダーの出現を望みたいところです。その意味では良いことなのでしょうが、それにしてもこの国は変色しました。
トランキホーテ
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