上海にて(4)阿Q保険

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阿Q.jpeg              (阿Q正伝)
 大まかな世界経済の動きを知るため、日本、アメリカ、香港、中国、韓国、EUの株式市場の動向と為替相場を、朝夕チェックしていますが、昨今の株の値動きは政治的な要素が重く絡まり、まったくわからなくなりました。特に上海株式が露骨な官製相場のブラックボックスになってしまい、世の中どうなっているのといった感じ。
 この株高乱下の状況でも機関投資家はお金儲けしているのですから、「大吃小(大が小を食べる)」そら恐ろしいほどすごいことです。上海のタクシー運転手に言わせると、「個人投資家が党と賭けをして勝てるわけがない」。
 中国の景気が減速し地方政府はいよいよ資金繰が苦しくなってきました。そこで出て来た苦肉の策は、市場開放後に産まれた1980年世代を対象に、前金6万元(約100万円)を振り込めば55歳から年金を支払うという養老政策です。出稼ぎして貯め込んだ農民のなけなしの金を、ていよく巻き上げて当面の急場をしのごうという魂胆。
 迫り来る高齢化社会における農民の養老政策という名目は美しく、老後の保障がない農民にとっては魅力的な保険です。農民が老後のために細々と貯め込んできたタンス貯金を(政府に銀行預金の情報あり)、いま前金を差し出せば20年後に年金をやるぞというわけ。不動産バブルがはじけた後、都市部の富裕層から株で金を巻上げ、それがだめなら農村部から保険金です。
 中央政府から資金繰りが苦しいなら地元の農民から取立てろという通達で、一種の年金機構ですから善政なのでしょうが巧妙な手口です。このように党中央の高級幹部は実に優秀でしてけしてあなどれません。
 
さて、(バラエティー番組風に)そこであなたに質問。
 農村部に戸籍をおく友人から、農民籍だけに与える優遇策なので加入したいが、あなたはどう思うかとぶつけてきました。
 私は瞬時に「NO」と思いましたが、これは20年後の中国をどう捉えるかの奧深い質問だと思い返し返答に躊躇しました。
 第1に今の共産政権がそれまで維持されているのか。
 第2にその時に果たして年金契約が履行されるのか。
 第3に履行されたとしても物価上昇で屑紙同然になっていないか。
 第4にその時この環境汚染のなかで農村部の平均寿命は?
 質問はつまるところあなたは現政権を信じられますかです。
 私には20年後の中国の状況などわかりません。予想はできますが、不確かなことは沈黙すべきで回答を保留しました。

 思うに多くの農民籍はこの「新養老政策」に加入するでしょう。農民は弱い者で、いつでも政権にふりまわされ、怯えながら犠牲を強いられています。

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このページは、三休が2015年9月11日 00:59に書いた記事です。

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