5月の花をもう一輪。上の写真は中米コスタリカの熱帯雨林で足場の危険もかえりみず渓流まで降りて行き撮らえた自慢の一枚です。私はこの花は熱帯雨林にだけ咲くものと思い、一期一会を感じて大切にしてきました(2011年11月29日のブログ「雨に咲く花」)。
先日3月のこと香港のビクトリア・ピークを散歩した時に、この花がたくさん咲いている木を発見しました。まさかの間違ではと4月にもう一度そこを訪ねて確かめたが、やはりこの赤い花でした。知ることは失うことでもあり、これには少々ガッカリ。その時ふと高校時代に愛読した「星の王子さま」が、バラの花に出会した一場面が思い浮かんできました;
「遠くに残してきた花は、じぶんのような花は、世界のどこにもないといったものでした。それなのにどうでしょう。見ると、たった一つ庭にそっくりそのままの花が、五千ほどあるのです。ぼくは、この世に、たった一つという、めずらしい花を持っているつもりだった。ところがじつは、あたりまえの花を、一つ持っているきりだった」。私もこんな心境でした。
「星のおじサン」さっそく調べてみましたら、マメ科の落葉高木で、インドやマレー半島を原産とする「珊瑚の木(Coral
Tree)」でした。なるほど赤珊瑚だ。緯度を同じくするコスタリカに咲いていても不思議でありませんが、こちらはメキシコ、アルゼンチンを原産とする花でした。日本では沖縄県が北限とされ春から初夏にかけて咲き、沖縄では「でいご」とよばれなんと県花にまでなっていました。花言葉は「夢」でして、私もいい夢をみさせてもらいました。
でいごの花が咲き
風を呼び 嵐が来た
でいごの花も散り さざ波がゆれるだけ
ささやかな幸せは うたかたの波の花 (島唄・宮沢和史)
な〜んだそうだったのか、「星のおじサン」とぼとぼとビクトリア・ピークを離れる時に、負け惜しみに「王子さま」の言いわけをつぶやき;
「あんたたちは美しいけど、ただ咲いているだけなんだね。あんたたちのためには、死ぬ気になんかなれないよ。そりゃ、ぼくの花も、なんでもなく、そばを通ってゆく人が見たら、あんたたちとおんなじ花だと思うかもしれない。 だけど、あの一輪の花が、ぼくには、あんたたちよりも、たいせつなんだ。だって、ぼくが水をかけた花なんだからね。いちばん大切なものは、心でしか見えない。かんじんなことは、目に見えないのさ」。
私は年甲斐もなく久さかたぶりに高校生の自分に舞い戻った気分でした。一輪の夢よ、有り難う!! (香港、ピークに咲く珊瑚の木)
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