不走回頭路

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IMG_2817.jpeg カシノ王国マカオから車で15分ほど北上すると拱北ボーダー(出入国管理所)があり、そこを越えると広州の珠海となります。国境の街はどこも殺伐とした緊張感がありますが、そこをほんのわずかだけ北上するとリゾート地区になります。
 私は混雑するマカオ経由を避け、香港からフェリーで1時間半かけ直に珠海の九洲港に入っていますが、近い将来に香港島からマカオと珠海に世界最長の橋が完成し、香港、マカオ、珠海が車でわずか30分でつながり大珠江区が誕生します。我々も1995年からここを拠点にして活動を続けています。
 珠海特区をさらに車で1時間ほど北上しますと、国父孫文(孫中山)の故郷である中山市があります。この道中の中間あたりに中山温泉で知られる三郷街があり、我々の工場はここにあります。この街には巨大な靴工場がありまして、かつては10万人の農民工を採用し、ここで世界有名ブランドのスニーカーの大半を生産していましたが、人件費高騰の影響を受けて工場が東南アジアへ移転し、今では3万人に激減しています。
 最近この街のメインストリートの十字路に「不走回頭路(後戻りしない)」というスローガンの鄧小平直筆の大きな看板が建ちました。そこには「1984年1月28日朝、鄧小平同志は三郷村中山温泉の裏手の羅三妹山に毅然と登られて、『もう後戻りはしない』と警世の決意を発せられた」(偉人の足跡を踏まえる三郷市)とありました。
 鄧小平は中国経済建て直しの英雄と崇められていまして、1992年1月に改革開放を号砲した「南巡講話」があります。この講話に先駆けること8年前に市場開放を決意した地という看板でした。
 なんで今頃になってこの看板なのかと思いますが、たぶん行け行けドンドの経済高成長が峠を越えて勢いを失い、行き詰まりを感じているからと推察します。さりとて今さら貧困の中国には戻れない、過去30年の急成長は望めなくも、鄧小平同志の初心の決意を踏まえこのまま前に突き進むのだと言ったところかと思います。

 スローガンは常に裏側を反映していまして、こんなところからも中国経済が急成長から停滞期に入ったことがうかがえます。

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このページは、三休が2014年4月25日 23:00に書いた記事です。

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