今年の5月、安倍首相がロシアと中東訪問を終え、専用機で羽田空港に着陸し、駆けつけた取材記者に見せるかのようなしぐさで一冊の本を手にしてタラップを降りてきました。当然なんの本かがニュースになるのを折り込みずみで、これは首相から国民に向けてのお薦め本という無言のメッセージだったかと思います。
この本のタイトルが「海賊とよばれた男」で、出光興産の創業者をモデルにしたドキュメント歴史小説でした。出版社もすかさず本の横帶に「安倍首相も愛読」と書き、たちまちベストセラーになりました。著者はいま絶高調の百田尚樹氏で、私もついに私より若い人から歴史を習うという、少しトホホで抵抗があったのですが、首相のお薦め本を読む事にしました。
物語は出光創業者の破天荒な悪戦苦闘の生涯と、石油の一滴は民族の血の一滴にまつわる壮絶な石油興亡史の二本立てで展開して行くのですが、私は一章を読んで涙し、また一章を読んで涙、一章ごとに涙々で、最後まで涙でした。
こんなに気持よく泣けた本もめずらしい。さすが「出光」でして名前の如く光り輝いていました。私も経営者として、至誠、鬼才、信念、士気、スケールにおける雲泥の差に、ただただ圧倒されるばかりでした。あまりのレベルの違いに、己が恥ずかしくなるほど恐縮し、なんと小さな経営者だったかを思い知らされました。爪の垢さえ煎じられません。世の中にはドすごい人が居られるものです。
どうやら安倍首相のメッセージは、「戦後レジーム体制の中で、日本の底力を信じて、希望を持って毅然として経済復興に立ち上がった立派な日本人がいた。私たちも第三の矢『成長戦略』を、頑張ってやろうでないか!」と、いうことらしい。
首相もなかなか憎い大根芝居をやるものです(ー。ー)
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