無錫に旅情があるのかわからないが、太湖は海のように大きかった。これが中国で三番目に大きい淡水湖というから、やはり中国は大きな国だ。
中国の人が琵琶湖を見て、芭蕉の有名な句に「古池や 蛙飛び込む 水の音」とあるが、古池とは「コレデスカ」と聞いたという、腹のたつ笑えぬ与太話しがあるが、さもありなんと思う。
経済開放後は太湖の周辺に工業団地が造られ、太湖に流れる河川の汚染が進み、太湖周辺は水質汚染と悪臭がきわめて深刻になっています。2007年には周辺住民の飲料水が、藻類の大発生により湖水が青く変わり臭気が激しく水道水が使えなくなる公害になりました。今はかなり改善されてきてはいますが、それでもタクシーで太湖の周辺を回ると、場所によってたまらない悪臭が漂ってくる。車の窓を閉め切り、息を止めたままで湖畔を通り過ぎるのでは旅情どころでない。おい、尾形大作いいかげんにせんかい。これでは芭蕉も句が詠めん。
それでも太湖の島巡りは悪臭もなくそれなりに楽しめた。当地の人も公害と戦いながら名勝地に再生しようと努力していた。民意が高まればだんだん改善されてくるので、ここは我慢です。
この島巡りの時にバックパックを背負って一人旅の女性(たぶん学生かと思う)と知り合いになった。裕福そうな顏で初めは台湾か香港からの旅行者かと思って声をかけたら、東北の瀋陽から来たと言い、杭州、上海を旅して、先ほど太湖に来たということだった。中国は空前の旅行ブームでして、そのほとんどが赤い帽子を被った団体旅行なのですが、いよいよ旅行ブームも若者がバックパックで一人旅をする時代になってきたかと感慨に打たれてしまった。
無錫旅情?
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