(昆虫写真家の渡辺泰之さん提供)
今日の産経ニュースに、約80年前にイギリス人が初めて採集した幻の蝶「ブータンシボリアゲハ」を、東京大総合研究博物館の調査隊が、今年8月に5匹の採集に成功したとあった。
ブータンの関係者から「似たチョウを見た」と情報が寄せられたが、現場が外国人立ち入り禁止の保護区域だったため、日本蝶類学会がブータン政府と約半年交渉し採集が実現したという。
幻の蝶を求めて首都ティンプーから車で約1週間、さらに徒歩で数日の森の中までとは、誠にご苦労様です。ヒマラヤの秘境を知る者にとっては、それがいかほど大変なことか察しられます。
たかが蝶、されど蝶なのか、直接社会や経済発展に役立つわけでもない学術研究に、これほど執念を燃やす学者馬鹿にほとほと(呆れる)敬服し頭が下がる思いです。この馬鹿らしさに挑戦する精神は日本力であり、日本文化の厚みです。まだまだ日本は健在です。
一方のブータンは不殺生の仏教国。野の花も切らず、虫も殺さぬ国ですから、この採集は明らかに密教の教えを侵犯しています。学究の為ならば採集は許されるということなのか。
調査隊もブータン仏教国に1週間あまり旅をしたなら、自然に採集する気も萎えてしまうと思うのだが、そこが学者馬鹿とでも言うもので、幸せの国にいても「物知りだけに不幸者」、彼らの来世は虫に生まれ代わる事を覚悟の上なのか。
蝶は秘境ブータンの山奥に飛び交うからこそ、ブータンシボリアゲハ蝶なのだから、命のかぎり自由に舞らせてやればいいものを。近代学問か、仏教の不殺生か、ハムレット・ブータンは、今日も山々の狭間で揺れている。
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