3月26日、27日に東日本大震災のお見舞い訪問し、4月20日、21日に再度お見舞い訪問してきました。今日は震災から「四十九日」となります。
3月の時には、大地震、大津波、放射能の三重苦からの緊張が続き、みなさんの心に身構えを感じました。今回は政治の無能、長引く余震、放射能風評の三重苦の緊張から、多くのみなさんの心が疲労していて、精神的に弱くなっている感じでした。
なかには大地震と余震の恐怖から不眠症に陥り、自律神経失調症の人もいました。更には心ない週刊誌がいつ来るのか予測もできない大地震を、明日にでも来るかの如くに書き、恐怖心を煽って販売部数を稼いでいます。
こうした情況ですから、気が滅入り、心も疲労して精神的に弱くなることもよくわかります。地震の恐怖の怯えている人に、「怖がるな」と言ったところで、なんの助けにもなりません。不眠症に陥っている人に、「心配しないでよく寝ること」と言っても、なんらのアドバイスにもなりません。心が疲労した人に、「心を休ませればよい」と言っても、どう心を休ませればよいのかわからない。こうした時にはどうしたらよいのでしょう。
心の問題は自分自身で解決させて、超えて行くしかないものですが、それにしても何もしてあげられない無力な自分を痛感させられます。
「こんな時こそ天風なのだ」と、喉まで出かけて口ごもり、歯がゆい思いでいます。
また、国の復興計画を見ましても復興予算の配分と、今後の再建は海岸沿いに家を建てず高台に、高い防波堤の建設など、防災の条件造りだけになっていて、心の領域が置き去りにされています。心の問題は復興予算だけでは解決できませんし、いったん恐怖に陥ればどんなによい防災施設を造ろうが、どこにいようが恐怖心を除けられるものでもありません。
復興再建には先ず心の再建が必要になります。
しかし、いまだ心をリードできる指導者が現れてませんが、そうした中で草莽の人たちがしっかり心を支え合って生き抜いています。彼らこそリーダーなのかも知れません。
あれだけの巨大な自然エネルギーに遭遇したのですから、その衝撃力からして、私たちにも大津波を押し返すだけの巨大な心的エネルギーが発揮されてくるに違いありません。それには草莽の人たちの心を奮い立たせる神話が必要になります。古代の人たちは自然の脅威に対し神話を持って立ち向かい、国を建設してゆきました。この度も大きな被災と犠牲者を出してしまいましたが、そのガレキの中からたくさんの東北神話が産まれでています。
自衛隊、消防隊、警察、海保などの犠牲を厭わない献身はそのまま神話になります。田中好子さんは女優になる前に巫女を努められた様ですが、死に逝く直前に「被災された皆様のことを思うと心が破裂するように痛み、ただただ亡くなられた方々のご冥福をお祈りするばかりです。私も一生懸命病気と闘ってきましたが、もしかすると負けてしまうかもしれません。でもそのときは、必ず天国で被災された方のお役に立ちたいと思います。それが私の勤めと思っています。」と、メッセージを残して逝きました。また、刑務所の受刑者たちが赤十字を通じて義援金を2000万円とのことです。こうした慈愛に満ちた国が、世界のどこにあるというのでしょうか。これらの愛のドラマが全て神話になります。
神話と言いますと何か古くさく思われますが、神と自然と人間が織りなす愛のドラマです。この震災を通して多くの日本人がみせた共生愛、運命愛でして、復興再建の礎となるものです。
被災者を弔い、被災地のガレキを祓い、そこに道祖神を打ち立て、土着の土産神々(うぶすながみ)を合祀し、地鎮祭を行い、この地に杭を打ち込んで再建してゆく精神です。
縄文の神話時代から私たちの祖先が力強く活き抜いてきたこの地を、新たに復興させて、これからも春には桜を愛で、夏には盆踊りで偲び、秋には五穀豊穣を祝い、大漁旗を揚げてお祭りを楽しみたい。
陛下は被災者を励ます為に東北の避難所を訪問なされ、体育館の床に両ひざをつき、一人一人に「お体は大丈夫ですか」、「お大事にね」などと声をかけております。陛下のお言葉の中に神話が集約されています;
「被災した人々が決して希望を捨てることなく、身体を大切に明日からの日々を生き抜いてくれるよう、また、国民一人びとりが、被災した各地域の上にこれからも長く心を寄せ、被災者とともにそれぞれの地域の復興の道のりを見守り続けていくことを心より願っています。」
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