日本の携帯電話の異常発達というか特異性を表現するために、最近「ガラパゴス化」という新語を耳にするようになった。
ガラバゴスは南東太平洋にある赤道上の島で、ダーウィンが進化論の啓示を受けた島として知られている。特異に進化した生物が生息していることで有名な諸島である。
そんなことでガラパゴス化とは、日本の文化、技術、サービスなどが、日本市場において特異に進化し、グローバルスタンダードからかけ離れてしまい、技術的には世界の最先端を行きながらも、世界市場で普及しないことを指している。
たしかに携帯電話の品質や仕様をみると、日本市場の要求から独自の進化をとげ、世界市場の標準からかけ離れて取り残されている感を拭えない。だが一方では、世界標準からかけ離れても、日本市場のユーザーを囲い込むだけで十分にやっていけるし、逆説的ではあるが外国メーカーの日本進出を防衛できることにもなります。メーカーにとりある意味で「鎖国製作」でもあり、また「足ることを知る」べしの痛し痒しでもある。
日本の経済論調はガラパゴス化をネガティブに捉える傾向があるが、私はそう悲観的にならなくも、もっと積極的に捉えていいのではと考えている。こうしたガラパゴス現象は、なにも今になって始まったものではなく、文化面で見れば、もっと根の深いものです。
サミュエル・ハンチントンの著者「文明の衝突」なかで、現代の主要な文明を、欧米キリスト文明、イスラム文明、東方正教会(スラブ)文明、インド文明、中華文明、アメリカ文明の七つの文明とアフリカ文明をあげています。その世界の諸文明の中にあって、文化および文明の観点からみると、すべて主要な文明には複数の国が含まれているが、日本文明が特異なのは、日本だけが家族をもたない孤立した文明で、日本文明だけが日本と一致していて、「日本は国そのものが文明」と、定義しています。この定義はトインビーやシュペングラーといった著名な文明史家が強調してきた「日本文明の独自性」と共通した認識です。
ですからガラパゴス化という表現は適切でなく、こうしたことは日本文明の独自性で、日本が日本であることを実践しているわけです。
日本のメーカーはこの事にもっと自信を持って、いい物を適正な価格で提供すれば、必ずお客が来てくれるという、物造りの基本精神に立ち帰り、日本市場のユーザーにこだわり続ければいいと思う。
パナソニックは電球の二股ソケットから始まり、シャープはシャープペンから創業していています。今、世界市場を謳歌するiPhoneのアップル社ですら、自宅のガラージからガラパゴス的にスタートし、創業者のこだわりの精神が脈々と続いています。
世のため、人のために、いい物を創ろうとするこだわりの精神は、文化を継承し再生産もします。そして真にそのこだわりの精神が価値あるものならば、やがては文明として世界へ普及して行くものです。
これまでもそうであったし、これからもそうであります。
「有花自然香」、花あれば自然に香るです。
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